円錐角膜治療

ICRS(角膜内リング)

ICRS手術前手術後ICRS(角膜内リング)は、もともと-3.00D前後までの軽度近視を治療するために使われていましたが、その技術を応用することで円錐角膜の治療にも役立つことがわかり、現在は主に円錐角膜の治療方法として使われています。

角膜の形状を矯正する骨組みとして半円弧状の2つのリングを角膜内に挿入すると、角膜の突出が軽減し、角膜の形状の非対称性を改善させる効果があります。手術後も不正乱視は残るため、メガネやソフトコンタクトレンズで視力の矯正をすることは難しいですが、角膜の形状がある程度整えられると、ハードコンタクトレンズが装用できるようになったり、または装用できる時間が伸びたり、矯正視力の向上が期待できます。通常、手術後3~6か月ほど経過して角膜の形状が安定した後に、円錐角膜用の特殊なコンタクトレンズの作成をおすすめしています。ICRSは角膜の形状を改善させるものですが、円錐角膜の程度には個人差や左右差があるためにその効果を手術前に予測することは難しく、また、もともとある程度以上の近視や乱視がある方は、手術後の裸眼視力自体はあまり改善しません。

みなとみらいアイクリニックでは、Intacs、IntacsSK、フェラーラリングと3種類のデザインやサイズが異なるICRSを導入し、円錐角膜の程度に合わせて選択しています。いずれのICRSも円錐角膜治療用としてCEマーク(すべてのEU加盟国の基準を満たす商品に付けられるマーク)を取得しています。

図1

治療効果の目安

円錐角膜の程度は個人差が大きいため、ICRS手術後の効果もその方によって異なりますが、大きな目安としては下記のようになります。

  • 円錐角膜の程度が軽度の方
    • 裸眼視力の向上(軽度近視の場合)
    • メガネ・ハードコンタクトレンズ装用時の矯正視力の向上
  • 円錐角膜の程度が中等度の方
    • ハードコンタクトレンズ装用時間の延長
    • メガネ・ハードコンタクトレンズの装用時の矯正視力の向上
  • 円錐角膜の程度が重度の方
    • ハードコンタクトレンズの装用困難から装用可能へ
    • メガネ・ハードコンタクトレンズ装用時の矯正視力の向上
手術方法

手術時間は片眼で約15分です。

手術方法1

ベッドに横たわり、麻酔薬を点眼します。

手術方法2

イントラレースレーザーで、角膜の中にトンネルを作成します。レーザー照射時間は約10秒です。

手術方法3

リングの入り口を作るために、レーザーでトンネルを1か所切開します。

手術方法4

切開面よりリングをトンネル内に挿入します。


手術方法5

保護用ソフトコンタクトレンズをのせたあと、10分ほど休憩して終了です。

ICRS(角膜内リング)のメリットとデメリット

メリット

  • リングの角膜形状矯正効果により、ハードコンタクトレンズの装用時間の延長や矯正視力があがる可能性があります

デメリット

  • 夜間や暗い場所で、光がにじんで見えたり、まぶしかったり、明るい場所に比べて視力の低下を感じることがあります
  • 治療の効果が得られない場合には、ICRSの種類の交換または抜去や、最終的に角膜移植手術が必要になる可能性もあります

ICRS(角膜内リング)の適応と禁忌

適応条件

  • リング挿入部の角膜の厚みが400μm以上あること
  • 医師の説明を理解していること

禁忌 (下記にあてあまる場合は手術の適応外になります)

  • リング挿入部の角膜の厚みが400μm未満
  • 眼の病気(活動性のある炎症、角膜ヘルペスの既往)がある
  • 妊娠中、授乳中
  • 医師の説明が理解できない
  • 屈折矯正手術が許されない特殊職業

フェイキックIOLとの組み合わせ

ICRSとフェイキックIOLの組み合わせICRSの手術後に角膜の形状が安定した後も、ほとんどの方が近視や乱視があるためにハードコンタクトレンズやメガネが必要になりますが、フェイキックIOLという眼内レンズの手術を追加することで、目安としてメガネでの矯正視力ぐらいまで裸眼で見えるようになります。ICRS手術後の経過の一例