フェイキックIOL

老眼に対応したフェイキックIOL

当院で取り扱っているフェイキックIOL(ICL・IPCL・EYECRYL)は老眼には対応していないため、老眼の自覚がある方が手術を受けられた場合は、手元を見る際には老眼鏡が必要になります。近年、老眼用の度数が加入された遠近両用の多焦点タイプのフェイキックIOLも発売され、当院では前房型と後房型、それぞれ1種類づつ取り扱っています。どちらのレンズが適しているかは患者様の目の状態によりますので、適応検査でデータを確認してからご案内いたします。ICL

IPCL V2.0 Presbyopic (アイピーシーエル 多焦点レンズ)

IPCLICPL PresbyopicはイギリスのEyeOL UK Limited社製の後房型フェイキックIOLです。国内未承認のレンズですが、CEマーク(欧州安全規格)を取得しており、同素材で作られている近視・遠視・乱視用のレンズは国内で承認されています。
回折という光の性質を利用した特殊な構造により、遠方に50%、近方に30%、中間(パソコンぐらいの距離)に20%という割合で光エネルギーを配分して3か所に焦点が合うように設計されたレンズです。老眼用の加入度数が7段階あり、年齢や老眼の進行具合に合わせて選択可能です。その他、近視・遠視・乱視用と同じく、レンズサイズが13段階から選択可能、レンズ度数の制作範囲が広い、レンズ光学部径が大きい、などが特徴のレンズです。

後房型フェイキックIOLの手術方法(IPCL Presbyopic)

手術時間は、両眼で約30分です。当日の所要時間は、手術前の準備、手術後の休憩時間を含めると、約3〜4時間です。

手術方法1

手術前に瞳孔を大きく開く目薬を点眼します。

手術方法2

局所麻酔後、角膜を約3mm切開します。

手術方法3

切開した部分からレンズを挿入します。

手術方法4

虹彩の後ろ(後房)にレンズを留置します。

手術方法5

瞳孔を小さく戻す目薬を点眼して手術終了です。30分休憩後、眼圧測定・診察をします。眼圧が高い場合は、さらに休憩をして再度測定・診察、を何度か繰り返す場合があります。

Artiplus (アルチプラス)

ArtiplusはオランダのOphtec社製の前房型フェイキックIOLで、国内未承認のレンズですが、2024年11月にCEマーク(欧州安全規格)を取得しています。
屈折という光の性質を利用した、同社から発売されている白内障手術用の多焦点眼内レンズと同じ設計のレンズです。光学部の中心は遠方用で、その周囲に交互に遠方用と近方用のゾーンが作られています。独自のテクノロジーにより遠方から近方までスムーズに見え、2つのシャープな遠方と近方の焦点の間で一定のデフォーカスが得られることで、中間距離も見やすくなっています。

前房型フェイキックIOLの手術方法(Artiplus)

手術時間は、両眼で約30分です。当日の所要時間は、手術前の準備、手術後の休憩時間を含めると、約3時間です。

手術方法1

手術前に瞳孔を縮める目薬を点眼します。

手術方法2

局所麻酔後、角膜を約3.2mm切開します。

手術方法3

切開した部分からレンズを挿入します。

手術方法4

レンズの両サイドを虹彩に挟んで固定し、終了です。

乱視の矯正効果を高めるために

乱視用の眼内レンズは目の中で角度が1度回旋するごとに乱視矯正効果が3.3%下がると言われており、正しい位置にレンズを固定することはとても重要なため、当院ではALCON社製VERIONイメージガイドシステムを導入しています。
VERIONイメージガイドシステムには術前検査で測定した角膜屈折値や強結膜血管、虹彩、輪部の情報を元にしたトラッキング機能が備わっており、手術中に目が動いた場合でも1度単位の正確さで「乱視用レンズを固定すべき位置」を医師が使用する顕微鏡下に表示します。このガイド位置を確認しながら乱視用レンズの固定をするので、より正確な乱視矯正が可能になっています。verion

目の手術は怖いと感じている方へ

笑気ガス麻酔手術に対する不安を和らげるために、当院では手術時に低濃度笑気ガス麻酔を併用しています。この麻酔は軽い鎮静・鎮痛・睡眠作用があり、歯科治療や無痛分娩などにも用いられている安全性の高い麻酔です。眠ってしまうほど強い麻酔ではなく、マスクから笑気ガス麻酔を吸入すると数分で心拍数・血圧・呼吸など全身状態が安定し、体がふわふわするようなリラックスした状態になります。
笑気ガスは体内で分解されず、吸入をやめるとすぐにそのまま排出されるので、数分で麻酔の影響はなくなります。呼吸器系、肝臓、腎臓、代謝系などに負担がかからないものですが、妊娠初期、鼻閉塞、過呼吸発作の既往、気胸、ビタミンB12欠乏症などに該当する方には適していません。詳しくは医師にご相談ください。非常にまれに、吐き気、四肢の脱力などの症状を感じる場合があります。

多焦点フェイキックIOLのメリットとデメリット

メリット

  • 遠くも近くもある程度メガネなしで見えるようになります。(手元の見え方は老眼の進行具合で変化する場合があります)
  • 強度近視や軽度の円錐角膜等の理由でレーシックが不適応の方でも、裸眼で生活できるようになります。
  • レーシックのように角膜を削らないため、目安として中等度以上の近視の方はレーシックよりも見え方の質が高くなります。
  • 万が一、レンズが目に合わなかった場合は、取り外して手術前の状態に戻すことができます。
  • 災害時にメガネやコンタクトレンズについての心配をせずに避難できます。

デメリット

  • フェイキックIOLは健康保険の適用外のため、手術費用は全額自己負担になります。
  • 将来、白内障や網膜剥離など、フェイキックIOLの挿入位置より後ろの部位の手術を受けることになった場合には、取り外す必要があります。
  • 多焦点レンズは目の中に入る光を分散させて焦点を増やしているため、薄暗い所では視力の低下を感じることがあります。
  • 多焦点レンズは夜間や暗所では、街灯や車のライト等の光がまぶしかったり、にじんで見えることが予想されます。
  • 後房型(IPCL)の場合、手術後の目の状態により、フェイキックIOLの挿入位置の修正やサイズを交換する場合があります。
  • 前房型(Artiplus)の場合、目に非常に強い衝撃を受けると虹彩からレンズ外れてしまうことがあり、再固定手術が必要になります。

多焦点フェイキックIOLの合併症

手術後に起きる可能性のある合併症として、下記のものがあります。

感染症

手術後早期は傷口から細菌が入り、感染症を起こす可能性があります。手術後1週間は目をこすったり汚れた手で触らないように十分に注意し、処方薬を医師の指示通りお使いください。

矯正誤差・矯正視力の変動

屈折矯正を100%の精度で行うことは現実的には難しく、近視・遠視・乱視がわずかに残ることがあります。手術後に遠くや近くをはっきり見るために、メガネやレーシック(適応者のみ)による追加矯正が必要になる可能性があります。また、手術の影響で矯正視力が変動する場合もあります。

眼圧上昇

手術中の薬剤や手術後に処方する点眼薬、手術後の一時的な炎症によって、眼圧が上昇する場合があります。状態によっては薬の変更・追加や、処置が必要になったり、通院日が増えることがあります。

光の輪

後房型(IPCL)の場合、目の中の房水の流れを妨げないようにレンズの中心に穴が空いているため、手術直後から半年程度はそれが光の輪として視界に見えることがあります。(やがて慣れて見えなくなることがほとんどです)

白内障(前嚢混濁)

後房型(IPCL)の場合、レンズが水晶体の前面(前嚢)に接触し、白内障(前嚢混濁)が生じることがあります。ほとんどは視力に影響を及ぼさない程度ですが、まれにレンズの取り外しや白内障の手術が必要になる場合があります。

夜間の光のにじみ・見えにくさ

多焦点レンズの場合、レンズの特性により、夜間や暗い場所で街灯や車のライトなどの光を見ると、手術前よりもハロ(光がにじんで見える)やグレア(光がギラついてまぶしく見える)を感じるようになります。また、薄暗い場所では見えにくくなります。

虹彩ブロック

非常にまれな合併症として、虹彩ブロック(レンズと虹彩が癒着し、房水の流れが悪くなる)を起こす可能性があり、急性緑内症発作の治療に準じた処置が必要になる場合があります。

多焦点フェイキックIOLの禁忌

下記に該当する場合は、多焦点フェイキックIOLの適応外になります。

  • 老眼の症状がない
  • 前房深度(角膜の後面から水晶体までの深さ)が2.8mm未満
  • 白内障・視野の欠損がある中〜重度の緑内障や、角膜・瞳孔・虹彩・ぶどう膜・網膜に異常がある
  • 妊娠中、授乳中
  • 屈折矯正手術が許されない特殊な職業の方

多焦点フェイキックIOLの手術前後のスケジュール

初回の適応検査を含めて、手術前は検査が2回必要です。
手術後は、手術翌日、1週間、1か月、3か月、6か月、1年、その後毎年1年に1回検査があります。

コンタクトレンズを装用中の方へ

適応検査前にコンタクトレンズの装用を中止する必要はありませんが、再検査前と手術前に下記のような装用中止期間があります。乱視用ソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズをご使用中で、早めの手術をお考えの方は、適応検査前から装用中止していただくことをお勧め致します。

1.適応検査・コンサルテーション (所要時間 2時間〜2時間半)

担当のスタッフが目のさまざまな検査を行い、その結果を元にICL手術の手順・メリット・デメリット・手術前後の注意事項など詳しいコンサルテーションを行います。最後に眼底検査*を含めた医師の診察があります。ご質問やご不安なことがありましたら、お気軽にお申し出ください。
*瞳孔を開く検査のため、検査後3〜4時間ぐらいぼやけて見えたり光を眩しく感じます。運転は控えてください

2.再検査の予約

適応検査終了時か後日お電話にて、再検査の予約を承ります。

3.再検査 (所要時間 1時間半〜2時間)

フェイキックIOLの種類・度数・サイズを決めるための重要な検査です。
検査結果に影響が出ますので、睡眠不足や検査前の長時間のスマホ・パソコンの使用・読書などは避けてください。
この検査の前に、コンタクトレンズの装用中止期間があります。

  • ソフトコンタクトレンズ … 最終検査の3日以上前から
  • 乱視用ソフトコンタクトレンズ … 最終検査の1週間以上前から
  • ハードコンタクトレンズ … 最終検査の4週間以上前から

4.フェイキックIOLのオーダー

予約金のご入金確認後に、レンズをメーカーより取り寄せます。届くまでに2週間~1か月ぐらいかかります。(在庫がない場合や乱視用は3か月以上かかる場合もあります)

5.手術の予約

レンズの入荷後に手術の予約が可能になります。入荷次第ご連絡致します。

6.手術 (所要時間 3時間〜4時間)

手術日は毎週金曜日です(不定期で火曜または土曜に振替あり)。
当日の来院時間は、手術日の前の週の土曜日ごろにお知らせします(時間指定不可)。
手術日の3日前から、全ての種類のコンタクトレンズの装用を中止してください。

7.定期検査

手術後は、手術翌日、1週間、1か月*、3か月、6か月、1年*、その後毎年1年に1回検査*があります。
*眼底検査を行います。検査後の運転は控えてください。


費用 *すべて税込表示です

適応検査・コンサルテーション、再検査
無料*

* 他院でレーシック・フェイキックIOL・円錐角膜治療の手術を受けられている方は、初回の検査費用として¥10,000かかります。

手術後の定期検査
¥1,200~¥3,000*

* お薬が追加になった場合は別途かかります。また、他院で手術を受けられ、当院での定期検査をご希望の方は、医療機関からの紹介状がない場合は、初回の検査費用として¥20,000かかります。

セカンドオピニオン
¥50,000*

* お薬が追加になった場合は別途かかります。

IPCL Presbyopic・Artiplus
両眼 ¥1,000,000 片眼 ¥500,000
IPCL Presbyopic (乱視用)
両眼 ¥1,080,000 片眼 ¥540,000