フェイキックIOLは正式には有水晶体眼内レンズと言いますが、最近では「眼内コンタクトレンズ」と言われることもあります。小さく丸めてわずか3mmほどの切開創から目の中にレンズを挿入し、近視・遠視・乱視を矯正します。切開した部分は縫合の必要がなく、視力の回復が早いのが特徴です。
フェイキックIOLはほとんどの近視・遠視・乱視の度数を矯正することが可能で、度数が強い、角膜が薄いなどの理由でレーシック手術が不適応の方でも適応となることが多くあります。角膜を削るレーシックに抵抗がある方にも適しています。
角膜を削って視力を矯正するレーシックと比較して、角膜形状の変化による度数の戻りの反応がなく視力の安定性がより高い、手術後のドライアイが軽い、見え方の質が高い、レンズを取り出すことができるリバーシブルな手術である、などの利点があります。また、コンタクトレンズのように汚れがついたり劣化することがないので、お手入れや交換の必要はありません。
注意点としては、目の中にレンズを入れる手術であるため、感染症や炎症を起こさないように手術後の注意事項や定期検査を守ることがとても大切です。
フェイキックIOL手術の対象年齢は21歳以上です。年齢の上限はありませんが、白内障を発症している方は適応外になります。また、前房深度(角膜から水晶体までの距離)が浅い方は、レンズを挿入するスペースを確保できないため、手術が不適応になる場合もあります。
フェイキックIOLはレンズを固定する場所によって「前房型」と「後房型」に分けられ、国内では後房型が主流です。当院では2001年から前房型、2007年から後房型の手術を行っています。
患者様の個々の目を解析し、現在当院で取り扱っている、ICL、IPCL、EYECRYLの3種類の後房型フェイキックIOLの中から、最適なレンズを選択して手術を行っています。さらに最近では、老眼に対応できる多焦点レンズも導入しました。
ICL(アイシーエル)は、アメリカのStaarSurgical社製で、コラーゲンとハイドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の共重合体という柔らかい素材でできています。
現在までに世界中で300万件以上の手術実績があり、1997年にCEマーク(欧州安全規格)取得、2005年にアメリカのFDA、2010年2月に日本の厚生労働省が認可しています(乱視用は2011年に認可)。みなとみらいアイクリニックでは2007年11月よりICL手術を導入しており、17年以上の実績があります。度数が−14.0Dまでの場合は、光学部径が従来のものより大きくなったEVO+モデルを使用しています。
ICLは国内で承認されている度数の他に、国内未承認の軽度の近視・乱視、強度の乱視の度数も制作しています。これらの国内未承認の度数は、アメリカのFDAで承認され、ヨーロッパのCEマークを取得しています。執刀医の荒井医師はStaarSurgical社の本社ライセンスを取得しているため、国内での認可度数範囲に関係なく、製作されているすべての度数を使用することができます。
ICL手術は国内で安全かつ安心に普及していくような取り組みとして、認定医(ラインセンス)制度が導入されています。眼科専門医であり、屈折矯正手術のガイドラインの受講、認定手術を経て認定医資格(ライセンス)を付与された眼科医のみが手術を行うことができます。認定医資格(ライセンス)は、現在日本国内で厚生労働省から認可を受けているICLレンズを取り扱うSTAAR Surgical社が付与するものです。
みなとみらいアイクリニックでICLの手術を担当する荒井宏幸医師は、インストラクター(指導医)のライセンスを取得しており、2007年11月から2025年7月末までの間に1,204件の手術を執刀しています。
ICPLはイギリスのEyeOL UK Limited社製で、現在までに世界中で13万件以上の手術実績があり、2017年にCEマーク(欧州安全規格)取得、2025年4月に日本の厚生労働省が認可しています。レンズサイズが13種類も揃っており、レンズ度数の制作範囲が広く、レンズ光学部径が大きいレンズです。目の中の水(房水)の流れをよくするために光学部の中心部に開けられたホールの形が他の後房型フェイキックIOLは円柱形なのに対し、IPCLは円錐形にデザインされており、光の散乱を抑制する効果もあると言われています。
乱視用はオーダーメイドのため、入荷まで1か月半~2か月ぐらいかかります。
EYECRYLはインドのBIOTECH VISION CARE社製で、国内未承認のレンズですが、2017年にCEマーク(欧州安全規格)を取得しています。ICL挿入時の切開層よりも小さい2.8mmの切開創から目の中に挿入可能です。他の後房型フェイキックIOLと同様にレンズ光学部の中心に房水の流れをよくするためのホールが開いており、緑内障の発生リスクを抑えられる構造になっています。ハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリルという水分含有量が多く、タンパク質などの汚れがレンズに付着しにくい特性がある素材を使用しています。
手術時間は、両眼で約30分です。当日の所要時間は、手術前の準備、手術後の休憩時間を含めると、約3〜4時間です。
手術前に瞳孔を大きく開く目薬を点眼します。
局所麻酔後、角膜を約3mm切開します。
切開した部分からレンズを挿入します。
虹彩の後ろ(後房)にレンズを留置します。
瞳孔を小さく戻す目薬を点眼して手術終了です。30分休憩後、眼圧測定・診察をします。眼圧が高い場合は、さらに休憩をして再度測定・診察、を何度か繰り返す場合があります。
乱視用の眼内レンズは目の中で角度が1度回旋するごとに乱視矯正効果が3.3%下がると言われており、正しい位置にレンズを固定することはとても重要なため、当院ではALCON社製VERIONイメージガイドシステムを導入しています。
VERIONイメージガイドシステムには術前検査で測定した角膜屈折値や強結膜血管、虹彩、輪部の情報を元にしたトラッキング機能が備わっており、手術中に目が動いた場合でも1度単位の正確さで「乱視用レンズを固定すべき位置」を医師が使用する顕微鏡下に表示します。このガイド位置を確認しながら乱視用レンズの固定をするので、より正確な乱視矯正が可能になっています。
当院では、手術時に点眼麻酔の他に低濃度笑気ガス麻酔を併用しています。低濃度笑気ガス麻酔は、歯科治療や無痛分娩などにも用いられている、軽い鎮静・鎮痛・睡眠作用がある安全性の高い麻酔です。手術中にマスクから笑気ガス麻酔を吸入すると数分で心拍数や血圧・呼吸など全身状態が安定し、ぼんやりと体がふわふわするようなリラックスした状態で手術を受けていただくことができます。低濃度笑気ガス麻酔は無料でご利用いただけます。
笑気ガスは体内で分解されず、吸入をやめるとすぐにそのまま排出されるので、数分で麻酔の影響はなくなります。呼吸器系、肝臓、腎臓、代謝系などに負担がかからないものですが、妊娠初期の方、鼻閉塞のある方、過呼吸発作の既往のある方、気胸の方、ビタミンB12欠乏症の方などには適していません。詳しくは医師にご相談ください。非常にまれに、吐き気、四肢の脱力などの症状を感じる場合があります。
手術後に起きる可能性のある合併症として、下記のものがあります。
下記に該当する場合は、フェイキックIOLの適応外になります。
初回の適応検査を含めて、手術前は検査が2回必要です。
手術後は、手術翌日、1週間、1か月、3か月、6か月、1年、その後毎年1年に1回検査があります。
適応検査前にコンタクトレンズの装用を中止する必要はありませんが、再検査前と手術前に下記のような装用中止期間があります。乱視用ソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズをご使用中で、早めの手術をお考えの方は、適応検査前から装用中止していただくことをお勧め致します。
担当のスタッフが目のさまざまな検査を行い、その結果を元にフェイキックIOL手術の手順・メリット・デメリット・手術前後の注意事項など詳しいコンサルテーションを行います。最後に眼底検査*を含めた医師の診察があります。ご質問やご不安なことがありましたら、お気軽にお申し出ください。
*瞳孔を開く検査のため、検査後3〜4時間ぐらいぼやけて見えたり光を眩しく感じます。運転は控えてください
適応検査終了時か後日お電話にて、再検査の予約を承ります。
フェイキックIOLの種類・度数・サイズを決めるための重要な検査です。
検査結果に影響が出ますので、睡眠不足や検査前の長時間のスマホ・パソコンの使用・読書などは避けてください。
この検査の前に、コンタクトレンズの装用中止期間があります。
予約金のご入金確認後に、レンズをメーカーより取り寄せます。届くまでに2週間~1か月ぐらいかかります。(在庫がない場合や乱視用は3か月以上かかる場合もあります)
レンズの入荷後に手術の予約が可能になります。入荷次第ご連絡致します。
手術日は毎週金曜日です(不定期で火曜または土曜に振替あり)。
当日の来院時間は、手術日の前の週の土曜日ごろにお知らせします(時間指定不可)。
手術日の3日前から、全ての種類のコンタクトレンズの装用を中止してください。
手術後は、手術翌日、1週間、1か月*、3か月、6か月、1年*、その後毎年1年に1回検査*があります。
*眼底検査を行います。検査後の運転は控えてください。
適応検査・コンサルテーション、再検査 |
無料* * 他院でレーシック・フェイキックIOL・円錐角膜治療の手術を受けられている方は、初回の検査費用として¥10,000かかります。 |
手術後の定期検査 |
¥1,200~¥3,000* * お薬が追加になった場合は別途かかります。また、他院で手術を受けられ、当院での定期検査をご希望の方は、医療機関からの紹介状がない場合は、初回の検査費用として¥20,000かかります。 |
セカンドオピニオン |
¥50,000* * お薬が追加になった場合は別途かかります。 |
ICL・IPCL・EYECRYL | |||
両眼 | ¥820,000 | 片眼 | ¥410,000 |
ICL・IPCL・EYECRYL (乱視用) | |||
両眼 | ¥880,000 | 片眼 | ¥440,000 |